高速バス・夜行バスのブレーキ

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中型・大型の高速バス・夜行バス車両で使われる安全なブレーキ

高速バス・夜行バスのエンジンや駆動系統など、快適に走行するためのメカニズムはこちらのページで説明してきましたが、やはり最も大切なメカニズムは「安全に止まれる」ことです。

 

特に近距離ではなく、長距離を走り、走行速度も速い高速道路で移動する車両は、その運動エネルギーが2乗に比例するため、制動距離も長くなる。

 

それだけに高速バスなどで使用されるバス車両は、ペダルで操作するフット・ブレーキを強化するだけではなく、 エンジン・ブレーキの能力を高めたり、リターダーと呼ばれる補助ブレーキも装着しなければならない。

 

大型バスのフット・ブレーキには、「エアオーバーハイドロリック・ブレーキ」が採用されている。「エア・オイル複合式ブレーキ」とも呼ばれ、空気の圧力によってブレーキを作動させるエア・ブレーキと、乗用車などに使われている油圧式のブレーキを組み合わせたものです。

 

初期のエア・ブレーキは、ブレーキペダルを踏むと、圧縮された空気がブレーキバルブからリレーバルブヘと送られる。そのまま空気の圧力によってプッシュロッド(ドラム・ブレーキの場合)やブレーキパッド(ディスク・ブレーキの場合)を作動させるというものでした。

 

一方、エアオーバーハイドロリック・ブレーキは、 エアタンクの空気圧をエアオーバーハイドロリック・ブースターの空気室に送り、空気圧がピストンを押してシリンダー内部のオイルに圧力を加え、オイルの圧力でブレーキを作動させる。

 

このシステムを利用すると、ブレーキペダルを軽く踏むだけで確実に制動力が発生し、ほどよいブレーキフィーリングがドライバーに伝わる。旧型のエア・ブレーキは空気圧で作動させているため、ブレーキがフワッとした感じになり、ブレーキ
が効きはじめるまでのタイム・ラグがあった。制動力も小さく、ドライバーは神経を消耗させる。そのためエアオーバーハイドロリック・ブレーキが開発されたわけです。

 

フット・ブレーキ以外にも、排気ガスを排出しにくくして、 エンジンの回転数を強制的に低くする「エキゾースト・ブレーキ」や、エンジン・ブレーキそのものを強化させるシステムなどが補助ブレーキとして使われている。

 

排気管の途中に開閉するバルブを設けて排気ガスの量を調整するエキゾースト・ブレーキの構造はとても簡単ですが、高い制動力が得られるのでディーゼル・エンジン車には必ずといっていいほど装備されている。

 

なお、エンジン・ブレーキを強化させるシステムはエキゾースト・ブレーキよりも効果があり、大型・中型の高速バス・夜行バスなどに多く採用されています。