大型バス車両のドアと、割れても安全な窓ガラス
乗客を30名以上を乗せられる大型のバス車両には、非常口の設置が義務づけられているので、高速バスにも必ず非常口がある。ほとんどの場合は、車体の右側後方もしくは後部に設置されていて、シートを跳ね上げて開けるか、あるいは非常口のドアを開けてからシートを押し出してから避難するようになっている。非常口の位置はバスによって異なるので、高速バス・夜行バスに乗車する際は、必ず乗車時にチェックしておこう。
乗客の乗降用ドアは自動的に開閉するタイプが一般的で、スイングドアと折り戸ドアの2種類に分けられている。スイングドアとはドア全体が一度外側に押し出され、そのあと後方へ(または前方へ) スライドしていくタイプ。折り戸ドアは中央部が折れて開閉するタイプで、普通の路線バスなどに使われている。
高速バスや夜行バスに使われているのは主にスイングドアです。スイングドアの特徴は開口部が広くとれることにあり、通常の乗り降りはもちろん、荷物をもっていても乗り降りが楽にできるので高速バスに採用されるようになりました。
次に、バスの車体のカラーリング(塗装)と同じく、外観の印象を決定づけるは窓の形ではないでしょうか。形やガラスの色、大きさなどによって、そのバスの個性が決まります。高速バスでは現在、前方のフロントガラスも横のサイドガラスも大型化される傾向にあります。
なかには、前から後ろまでが1枚のガラスに見える「ピラーレス」というタイプの窓が使われているバス車両もある。これは、バスの乗客に景色を楽しませるだけでなく、その他にも多くのメリットがあるのです。
ピラーレスタイプは固定式のため、気密性が高く、エアコンを無駄に稼動させない。ガラスを独立させるためのピラー(棒) がないため、軽量化にも役立っている。また省エネ効果が期待できるだけでなく、スタイルも抜群です。
一昔前のピラーを採用しているバスに比べるとはるかにゴージャスな印象が漂っています。ちなみに乗用車同様、ガラスはすべて割れにくく、万が一、割れても破片が飛び散らない「安全ガラス」が備えてある。
種類は強化ガラスと合わせガラスの2種類です。乗用車のサイドガラスに使われている「強化ガラス」は、普通のガラスに熱処理して圧縮応力を加え、曲げたり引っ張ったりする力に対して強度をもたせているガラスです。割れたときは全体が粒状になり、人体を傷つけることはほとんどありません。
一方フロントガラスは、ガラス全体が割れてしまうと、前方から吹きつける風など、高速走行時は非常に危険です。そこでフロントウィンドウには「合わせガラス」と呼ばれるタイプが使用されています。
これは2枚のガラスの間に薄くて強靭な透明フィルム(中間膜)を挟んだもので、フィルムに支えられているので、割れても粉砕しない。高速道路の走行中には前方から小石などが飛んできてガラスに当たることもありますが、ガラスにヒビが入ることはあっても、崩れ落ちることはない。
以前、オーストラリアの高速バスのフロントガラスに、フクロウが突っ込んだことがありました。すさまじい衝撃音が車内に響き、睡眠中の乗客も全員飛び起きるほどの衝突だったということですが、フロントガラスはクモの巣状にヒビ割れただけだったそうです。バスはその後も平常に走行を続け、予定時刻に目的地へ到着したという。これも合わせガラスの効果なのです。
合わせガラスの中間膜には、ガラス破片の飛散を防ぐ目的だけでなく、視界の確保にも役立つ。太陽光線を和らげるために色をつけたり、紫外線をカットする機能をもたせているのです。同時に冷暖房の効果、さらには外部から車内を見えにくくし、防犯の役目も担っています。