高速バス・夜行バスのエンジン

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高速バス・夜行バスで使われている車両のエンジン

バスの動力には主に、ディーゼル・エンジンが使われています。乗用車のようにガソリン・エンジンを搭載しているタイプの車両もありますが、現行型の大型バスではディーゼルが主流となっています。では、何故がガソリンよりもディーゼルの方は良いのでしょう。

 

乗客を乗せて長距離を走る高速バス・夜行バスでは、ちょっとした故障でも大きな事故やトラブルに結びつく原因となります。故障するたびに整備していたのでは運行業務に支障をきたすし、何よりも安全を確保することができない、そのためエンジンに求められる条件も、耐久性と信頼性が第一になります。

 

乗用車などに使われるガソリン・エンジンの寿命は約10万q。欧州車ではもう少し伸びますが、国産車ではタイミングベルトの交換が不可欠になるため、10万qが一つの目安となります。

 

一方、高速バス・夜行バスで使われる車両に搭載されているエンジンの寿命は、10万qどころではありません。長く使われる路線バスの走行距離は10年間で100万qを超えると言われているので、10万q程度では新車に近い状態を保っているほどです。

 

理由はいくつかありますが、最大の原因は頑丈な構造にあります。ディーゼル・エンジンの燃料である軽油は、燃焼するときに高温高圧になる。同じ大きさのガソリン・エンジンと比較した場合、ガソリン・エンジンの圧縮比、8〜10に対して、ディーゼル・エンジンは、16〜23と倍以上になる。

 

このときシリンダー内の空気は600度に達し、圧力は40気圧以上。ここへ400〜600気圧に圧力が高められた経由が噴射され、燃焼がはじまる。その高温高圧の状態はガソリン・エンジンの比ではありません。こんな過酷な状況でも正常に作動するディーゼル・エンジンは、もともと強固な構造となっているのです。

 

噴射された経由は高温の空気によってガス状になり、酸素と化学反応を起こして燃焼する。混合気を電気発火させるガソリン・エンジンとは違い、燃料は自然発火によって爆発を繰り返します。

 

これはバスなどの業務用車両に不可欠な「経済性」にも好影響を与える。自然発火するということは、燃焼ガスが何ヵ所かで同時に燃え出すわけで、燃えるスピードも早く、燃焼にも無駄がありません。ガソリン・エンジンのような発進時に車体がガクガクするノッキング現象もなくなる。ディーゼル・エンジンには大重量の車両を動かすパワーが秘められているのです。

 

ところで、エンジン配列には大きく分けて直列、水平対向、V型の3種類があります。市街地を走る中型バスのエンジンには直列6気筒が多いですが、高速バスや夜行バスなどで使われる大型バスに用いられるエンジンはV型が圧倒的に多い。

 

直列や水平対向に比べて全長、全幅ともにコンパクトにできるからです。客室スペースを少しでも広くとりたい高速バス・夜行バスにとって、この利点は非常に大きなものです。

 

しかし、騒音や振動は直列に比べて大きくなる。そのためエンジンルームは騒音が外に出ないように完全に吸音材で囲われ、三菱自動車エアロクイーンのように振動を遮断するため後部の床面に制振合板が使われているバスも登場しています。

 

このような工夫によって、近年、高速バスや夜行バスの騒音や振動が大幅に軽減されてきたため、老若男女問わず幅広い客層に高速バス・夜行バスが支持されているのです。