高速ツアーバスの車両で使われているトランスミッション
トランスミッションとは「変速機」のことです。エンジンの動力は、トランスミッション、プロペラシャフト、デファレンシャル、ギアを介してホイールに伝えられる。このメカニズムは乗用車も高速バスもトラックもすべて同じです。
自動車が動き出そうとするときには強力な力が必要です。そのためエンジンの回転をギアによる減速で遅くさせ、強い力に置き換えて車輪に伝える必要がある。トランスミッションはギアを何段か組み合わせて、発進から高速走行まで適当な力を伝える役割を担っているのです。
トランスミッションには手動でギアを変える「マニュアル・トランスミッション」と、エンジンの回転数と負荷に応じて自動的に適切なギアを選んで変速する「オートマチック・トランスミッション」がある。どちらも乗用車で使われていますが、高速バスや夜行バスの場合も原理は同じ方式です。
大型・中型バスのトランスミッションは、2〜5速にシンクロメッシュが付いた5段変速のマニュアル・トランスミッションが多い。高速バスや観光バスは、これにオーバードライブを付けた6段変速が一般的です。
市街地を走る路線バスも、5速マニュアルを装備していますが、実質的に使用するのは2速〜4速。1速は乗客が多く、重量が大きくなる時や、急な上り坂などでパワーが必要なときのみに使う。
シフトチェンジは運転席、左横のフロアに装備しているレバーで行いますが、高速バスや夜行バスのように全長の長い車はロッドの距離が短いので、シフトがとても重くなります。そこで圧縮空気を使って操作を軽くするパワーアシストが付いたトランスミッションが近年、急速に普及しています。
これはシフトレバーによるギアの選択を、電気信号に変えて変速機に送り、その信号を読み取った変速機が自動的に変速するというもので、システムは同じでもメーカー各社によって呼び方は異なります。操作感覚はマニュアル・トランスファーに近いですが、実質的には半オートマチック・トランスミッションといった感じです。
手元のレバーを軽快に操作できることによって、大型車両の運転性は著しく軽減された。クラッチ操作は発進時のみで、あとはオートマチック・トランスミッションと同じ使い方ができるシステムなども登場し、ミッションはさらに進化を続けています。
オートマチック・トランスミッションの代表的なシステムは、クラッチの代わりにトルクコンバーターを利用して変速する「トルコン式」です。マニュアル車に比べて整備回数も少なく、ドライバーの疲労も軽減される。高速バスや夜行バスであれば問題はないのですが、コストがかかるため、路線用のバスに搭載するにはあまり現実的とは言えません。